吉田 和夏|まばゆい迷路 at GALLERY MoMo Ryogoku
GALLERY MoMo Ryogokuでは、吉田和夏の個展「まばゆい迷路」が2024年1月13日(土)から2月17日(土)まで開催されています。本展で吉田は「迷路」というテーマを採用し、身近な空間を切り取っても宇宙と地続きに結びついていると感じさせる新作が展示されています。会場にはミニリーフレットが配布されていたり、主に恐竜をモチーフとしたグッズも販売されており、それらを含めて吉田が関心を向け、想像力を広げるフィールドがひとつの世界観として展開されています。懐かしくもあり、少し先の未来へ背中を押されるような感じもする、不思議な時間を体験しに訪れてはいかがでしょうか。
わくわくするような世界へ
同ギャラリーのガラスの扉を開けると、一瞬、いつもと違うことに気がつきます。中を見渡すと、フリーマーケットのようなグッズ販売の台があったり、大きな迷路が描かれた作品やたくさんの恐竜のモチーフが目に入ったりで、子どもの頃に親しんだ学習図鑑の世界に飛び込んだような、わくわくする気分になります。実際に、奥には《まばゆい迷路の庭 2》という図鑑が描かれた作品もあります。
吉田はこれまで地形、恐竜、立体模型、鉱物などの博物学的なモチーフからインスピレーションを得て、平面や立体にとらわれない作品を制作してきました。近年では目に見えない未知の事物からインスピレーションを得ながら、現実世界に似たパラレルワールドや多元宇宙の空間、時間、生物などを多層的な表現で描き出しています。
作品世界の中を横断する登山家
新たに登場する登山家の人物は、吉田の作品世界の中を横断し通り抜ける存在として描かれており、「より絵の中を徘徊する感覚が強くなった」と述べています。まるで吉田が自分で作り上げた世界で遊んでいるかのようです。
そうした遊び心は、チューインガムの箱をフレーム中のフレームにしたような作品にも表れているような気がします。このガムの箱はかつてお菓子屋さんの店頭に実際に並んでいたであろう本物が使われており、聞けば吉田はフリーマーケットが大好きだそうで、これもそこで手に入れたようです。またご自宅も、そうして集めたグッズであふれているそうです。
身近なモチーフで現実にはない世界を表現
吉田和夏は1983年に岩手県で生まれ、2006年に埼玉大学教育学部美術専修を卒業後、セツモードセミナーで学びました。2007年にはイラストレーション ザ・ チョイス年度賞を受賞。作家集団画賊にも所属して作品を発表し、2014年の第17回岡本太郎現代芸術賞では入選を果たしています。イラストとアートの境界線上で制作を続け、ユニークなモチーフやオブジェは多方面で評価を得、活躍の場を広げています。
彼女の作品は「絵画というほぼ平面で、奥行きや浮遊感を意識して騙し絵のように描くことで没入感を得たり、平面性が揺らぐよう試みている」と語る通り、身近なモチーフを用いながらも、現実世界ではない時空に存在するような不思議な世界を表現しているところが特徴的です。
同じ岩手県生まれの先達との共通点
吉田の作品を観ていると、同じ岩手県に生まれた宮沢賢治が、「春と修羅」という散文詩の序文冒頭で記している“わたくしといふ現象”という言葉を思い出します。ここにあるのは、単純に吉田という人の内面が映し出された世界ではなく、自分という存在を“現象”として客観視することで、吉田自身が自由になり、時間や空間も飛び越えて、人と好奇心でつながり合おうとする普遍的で想像力豊かなフィールドとなり、そこへ私たちが招待されているように感じられます。
今回は「迷路」というテーマが設定されていますが、ゴールが見えない不安や恐れといった感情がゆらめく一方で、どこか「迷路でいっしょに遊ぼうよ」と誘われているような、未知なるものへのわくわく感も同居しているような気がします。もしかしたら、吉田の個展を訪れるということは、新しい友達と出会うことと同じかしれません。あなたもぜひ、ぶらりと出かけてみてはいかがでしょうか。
最後に、ギャラリーの公式サイトより、アーティストコメントを引用で紹介いたします。
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迷路のように、はじまりがあっておわりがある世界で、不惑の歳に到着した私は、迷う/迷わないについて考えている。
こどもは猛烈なスピードで駆け抜けていく、不思議なくらい止まらない。かつては私もずんずん進んでいた。
今の気分は、積極的に辿り着かないでみようという感じ。先に進むのが怖いだけかもしれない。
ふくざつな迷路の中で、眩い景色を探してみる。
2023年 吉田和夏
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タイトル | 吉田 和夏|まばゆい迷路 |
会期 | 2024年1月13日(土)~ 2月17日(土) |
会場 | GALLERY MoMo Ryogoku |
住所 | 130-0014 東京都墨田区亀沢1-7-15 |
Webサイト | https://www.gallery-momo.com/current-ryogoku |
開廊時間 | 11:00 ~ 19:00 |
休廊日 | 日曜・月曜・祝日 |
観覧料 | 無料 |