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版画の青春 小野忠重と版画運動 ―激動の1930-40年代を版画に刻んだ若者たち― at 町田市立国際版画美術館

町田市立国際版画美術館では、「版画の青春 小野忠重と版画運動」が2024年3月16日(土)から5月19日(日)まで開催されています。本展では関東大震災から太平洋戦争へと進む激動の1930-40年代に、版画に熱中した青年たちがいかにこの時代を超えようとしたか。その「青春期」を探っていく貴重な機会となっています。明治の終わりに登場し、太平洋戦争の困難をも乗り越えようとした創作版画はどのようなものだったのか、興味はつきません。ぜひ、ご覧になってはいかがでしょうか。

関東大震災から太平洋戦争へ、激動の1930-40年代

昭和初期にあたる1930年代の東京は関東大震災から復興し、地下鉄が開通し、新しい景観と映画やカフェなどの娯楽文化が流行する近代都市へと変貌を遂げています。その一方で、この年代は経済や文化面などへの国家の統制が強化され、戦時体制へと歩みが進んだ時代でした。

新しい表現手法やジャンルだった「創作版画」

「創作版画」とは明治期後半に始まり、昭和初期にピークを迎えた日本の版画における芸術運動で、2つの特質があげられます。ひとつは複製技術として重視されていた版画が、絵画などと同じく、美術の中の独立したひとつのジャンルと見なされ始めた時代背景があったことです。ふたつめは、日本の伝統的な版画である浮世絵は絵師と彫師、摺師と分業で制作されていましたが、「創作版画」では多くの作家がすべての工程をひとりで担いました。ひとつの新しい表現手法やジャンルとしての“版画”を手に入れた、当時の若い作家たちの心情に想いを馳せれば、新進気鋭の意欲に満ちた彼らの気概を理解できるでしょう。

「新版画集団」の結成から「造型版画協会」まで

こうした時代を背景に、1932年(昭和7)に小野忠重(おのただしげ/1909〜1990)や武藤六郎(むとうろくろう/1907〜1995)ら20代はじめの青年たちが「新版画集団」を結成し、「版画の大衆化」を掲げて版画運動を開始します。この後グループは、活動の中で、現代版画には絵画的充実が必要だと実感し、1936年(昭和11)に一旦解散します。その後、小野や清水正博(しみずまさひろ/1914〜2011)らメンバーの一部が1937年(昭和12)に「造型版画協会」を結成して版画運動を継続・発展させました。

知られざる1930-40年代の創作版画をなんと約300点展示

本展では、「新版画集団」と「造型版画協会」のリーダーであった小野忠重の旧蔵品を中心とした約300点の作品によって、これらのグループによる版画運動の様々な様相を観ていきます。また、激動の1930-40年代という時代に版画に熱中した青年たちが、如何にこの時代を超えようとしたかを考えさせられるでしょう。本展は、明治の終わりに登場し、まだ30年にも満たなかった創作版画の、いわば「青春期」を振り返る機会にもなることでしょう。

【展示構成】

第一部: 新版画集団 ―「版画の大衆化」を掲げて

第Ⅰ章: 1932年 ―「新版画集団」結成

1932年4月、小野忠重ら20代前半の若者をはじめとした22名が「新版画集団」を結成しました。彼らは活動の目標に「版画の大衆化」を掲げ、内容を大衆化すること、そして多くの人々が鑑賞できる方法で発表することを訴えます。

第Ⅱ章 1933-36年 ― 版画運動の進展と解散

新版画集団は機関誌『新版画』の発行と年1、2回の展覧会の開催などを通じて「版画の大衆化」に向けて版画運動を進展させました。しかし、版画の絵画性を充実させることで大衆の眼に応える方向性に仕切り直すため、1936年12月に解散しました。

第二部:造型版画協会(戦前を中心に) ― 絵画的充実を目指して

第Ⅰ章 1937年 ―「造型版画協会」結成時のメンバーと戦前の作品

1937年3月、新版画集団のメンバーであった小野忠重、末木(荒井)東留、清水正博、柴秀夫、水船六洲の5名が造型版画協会を結成しました。協会の目標は、版画もまた「絵画」であるとし、マチエールなど造形性の充実や作品の大型化を重視しながら版画の独自性を追求することにより、結果的に版画への大衆の関心を拡充してゆくことでした。

第Ⅱ章 1938-43年 ― 戦時下での活動 新たな会員と公募出品者

1937年5月に第1回展を開催した造型版画協会は、その後、1941年に太平洋戦争が始まり、戦時体制が強化されたことで、美術家の制作や発表も抑圧を受けます。しかし、会員たちは困難を乗り越えながら、1943年4月の第7回展まで開催を続けました。

第Ⅲ章 戦後、あらたな時代へ 運動の継続と表現の模索

造型版画協会は1949年12月に戦後初めてとなる展覧会を開催して活動を再開させ、1954年の第12回展まで、東京でほぼ年1回のペースで展覧会を開催しました。この版画運動は、1954年に結成された日本版画の育成・発展を目指した「版画懇話会」の活動に引き継がれていきました。

タイトル 版画の青春 小野忠重と版画運動
―激動の1930-40年代を版画に刻んだ若者たち―
会期 2024年3月16日(土)〜 2024年5月19日(日)
※会期中4月23日(火)から約10点を展示替えします
会場 町田市立国際版画美術館 企画展示室1、2  ※巡回なし
住所 〒194-0013 東京都町田市原町田4-28-1
Webサイト https://hanga-museum.jp/
開館時間 【平日】 午前10時~午後5時 (入場は4時30分まで)
【土日祝】 午前10時~午後5時30分(入場は5時まで)
休館日 月曜日
※ただし4月29日(月祝)・5月6日(振休)は開館、4月30日(火)・5月7日(火)は休館
料金 【一 般】900(700)円
【大・高生】450(350)円
【中学生以下】無料
※( )内は20名以上の団体料金
※身体障がい者手帳、愛の手帳(療育手帳)または精神障がい者保健福祉手帳をお持ちの方と付き添いの方1名は半額