中田 拓法|FLOWER at GALLERY MoMo Projects
GALLERY MoMo Projectsでは、中田拓法の個展『FLOWER』が2024年4月20日(土)から6月1日(土)まで開催されています。本展では、被写体をさまざまなアングルから撮影し、そこからリアルな3DCGを作成するフォトグラメトリを利用した作品シリーズが展示されています。それぞれの作品は、3DCGの写真作品と伝統的な油彩による絵画作品がひと組になっており、そこから中田が探求するリアリズムがうかがえるようです。iPadによるARも含め、観る楽しさ、考える楽しさを提供してくれる時間となるでしょう。ぜひ、体験してみてはいかがでしょうか。
写真と絵画がひと組になった作品
ギャラリーでひと通り作品を観ると、写真作品と絵画作品が対になっており、4組の作品が展示されていることが分かります。写真作品は偏光紙にプリントされており、鈍く、絹の表面のような光沢を見せています。
絵画作品はキャンバスではなく、ウェディングドレスなどによく使われるオーガンジーという薄くて透け感がありながらハリのある生地が用いられており、繊細な印象も受けます。
いずれも幻想的なイメージで、静物を描きながら、風景のようでもあり、既視感がありながら、見たことのないものへの予感もして、不思議な感覚にとらわれます。
デジタルメディアから伝統的な油絵を学ぶ
中田拓法は1982年に埼玉県で生まれ、デジタルメディアについて広く学ぶ大学で学士を得てから、多摩美術大学の油画専攻に入学し、2014年に同学大学院を修了しています。大学院在学中の2013年には、ANOTHER FUNCTION(東京・六本木)に於いて、本江邦夫氏の推薦により初個展を開催。その翌年にはGALLERY MoMo Projectsでも初の個展を開催するなど、東京を拠点に発表を続けてきました。2021年には「WATOWA ART AWARD 2021 EXHIBITION」ファイナリストに選出され、2022年には「IMA next#34 Photography and Painting」においてグランプリを受賞しています。
花の“一生”をとらえたフォトグラメトリ
本展に展示されている写真作品は、中田自身がアーティストコメントに「花瓶に生けた花を用意し、花が枯れるまで、定期的に様々な角度から撮影する。その写真を元にフォトグラメトリを行う」と記しています。しかしながら作品を観ていると、“花が枯れる”=カタチあるものが崩壊していくイメージはありますが、それが死あるいは“終わり”という印象は受けません。
伝統的な絵画的言語にプログラミング言語が介在
中田は初期作品では身近な風景と死をイメージさせる人物を、ロマン主義的で幻想的なイメージで描きました。次第に風景そのものは現実から離れ、存在しない風景に現実味を与えて表現し、風景の持つ意味について人間の死と交錯させて考えを深めて来ました。
しかしながら近年は、伝統的な絵画的言語にプログラミング言語を介在させることで、伝統的な絵画的言語のみでは認識できなかった概念を見出せるという確信を元に、主に「死」を内包した風景を描いています。他に3DCGや画像加工ソフトなど、デジタル技術を幅広く利用し、デジタル技術によって拡張された新たな第六感的ともいえる霊感による絵画の制作を試みています。
可能性広がる中田の意欲的な取り組み
そのためか、“「死」を内包した風景”といいつつ、暗い陰鬱なイメージではなく、何か神秘的で、別の異世界への入り口を感じさせるような作品となっています。中田の伝統的な絵画的言語にプログラミング言語を介在させる発想は、これから誰も見たことのない世界、誰も観たことのない絵画表現の探求へとつながっているようです。
この他、会場ではAR(拡張現実)も楽しむことができ、インタラクティブな体験の可能性も示唆しています。
これからも可能性を広げていくであろう、中田の意欲的な取り組みを目撃しに、あなたもお出かけしてはいかがでしょうか。
タイトル | 中田 拓法|FLOWER |
会期 | 2024年4月20日(土)~ 6月1日(土) |
会場 | GALLERY MoMo Projects |
住所 | 106-0032 東京都港区六本木6-2-6 サンビル第3 2F |
Webサイト | https://www.gallery-momo.com/current-roppongi |
開廊時間 | 12:00 ~ 19:00 |
休廊日 | 日曜・月曜・祝日 |
観覧料 | 無料 |