1. HOME
  2. Events
  3. 銀座/日本橋
  4. 資生堂ギャラリー
  5. 第14回 shiseido art egg 藤田クレア展 in 資生堂ギャラリー

第14回 shiseido art egg 藤田クレア展 in 資生堂ギャラリー

資生堂ギャラリーでは公募プログラム第14回「shiseido art egg(シセイドウアートエッグ)」に入選された3名の内、西大志さん、橋本晶子さんに続く3人目の入選者、藤田クレアさんによる個展「ふとうめい な繋がり」が開催されています。
2006年から始まる公募プログラム「shiseido art egg」は、1919年のギャラリーオープン以来の活動理念である「新しい美の発見と創造」を体現するような、瑞々しい新進アーティストを応援する取り組みです。
公募プログラムではあまりない、入選者は資生堂ギャラリーの担当キュレーターと話し合いを重ね、通常の企画展と同様に共に展覧会を作り上げていきます。今回も過去の2名の方同様、資生堂ギャラリー独特の空間全体を活かした展開となっています。

秘密のボールダンスパーティーへ
今回の藤田さんのコンセプト、「首都東京のブランド街とも言われる銀座の地下で行われる秘密のボールダンスパーティー」があると聞いて、少しわくわくしながらギャラリーの階段を下りていきました。
フォルムを解析するような直線をまとった3つの巻貝の作品に出迎えられた後、地下階に到着すると、水の心地よい音とともに巨大なシャンデリアのようなオブジェと、まわりの壁面にシリンダーのように動く4基の金属棒が配置されたインスタレーションが目に飛び込んできます。

この中央のオブジェはまるで生きもののように、脈動するような生命感を放っています。
オブジェの頂点には水がしたたり落ちるシャンパングラスのような器があり、だからパーティーなのかと思いがちですが、それ以上の意味がありそうです。
よく観察すると、外側のチューブから吸い上げられる水は黒く見えるのに、頂点から落ちてくる水は透明です。また、人工的に吸い上げられた水が重力で落ち、せせらぎのような自然の音を奏でているコントラストも生きものを感じさせる要素でしょうか。
見れば見るほどいろんな発見があり、不可思議な感覚にとらわれます。このインスタレーション自体が非日常的空間ですが、ここで長い時間を過ごせば過ごすほど藤田さんの世界に吸い込まれていきそうです。

藤田クレアさんは、人間同士のつながりや距離、時代とともに変化していくコミュニケーションの在り方に関心を広げ、創作活動に取り組んでこられました。今、もっとも私たちが時代の変化と感じられる背景と言えばCOVID19です。藤田さんは「如何に物理的距離を取りながら、繋がり合うか」が重視される中で、原点に立ち返って「繋がり」ということ自体が何なのか、どのような構造を持つのかに重点を置いたと語っています。
個展のタイトルである「ふとうめい な繋がり」とは何なのかを感じながら観ていきます。

踊り場と小展示室に展示された巻貝の作品は、「黄金比」といわれるそれらのかたちをなぞり測定した結果を音やドローイングに変換されたものです。自然の美しい巻貝と、無機質にも見える数学的なアプローチが明確にコントラストを描きながらも、何かひとつのことを形づくっているように見える様は興味深いと感じます。また大きな展示室のオブジェとはカタチは違いますが、何か同じことを語りかけられているような気もします。

海外生活が長く多文化の中で育った藤田さんは、常に他者との違いを意識されたそうです。その中で「わからない」ことを肯定し、興味深く観察することで作品化されます。それは関係性の構造についての考察でもあり、新なコミュニケーションにより加速するともいわれる「分断」や「同調圧力」といった社会問題に対するささやかな抵抗でもあるそうです。

この個展を訪れた方それぞれに見えた「繋がり」があると思いますが、それは作品によって呼び覚まされた記憶の違いかも知れません。
また、“パーティー”はしばしば未知の人との出会いの場であり、一生の中では刹那的な時間になりがちです。しかし、この出会いをきっかけとして、またどこかの“パーティー”で藤田さんの作品に会いたくなる、そんな楽しい時間を過ごせる個展でした。

タイトル 「第14回 shiseido art egg」 藤田クレア展
会期 2020年11月27日(金)~12月20日(日)
会場 資生堂ギャラリー
住所 〒104-0061 東京都中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル地下1階
Webサイト https://gallery.shiseido.com/jp/
営業時間 平日 11:00~19:00
日曜・祝祭日 11:00~18:00
休館日 毎週月曜日
※月曜日が祝祭日にあたる場合も休館いたします。
料金 無料
※館内のソーシャルディスタンスを確保するため、事前予約制となっています。
詳しくはこちらをご覧ください。https://artsticker.app/events/272