かこさとし展　子どもたちに伝えたかったこと in Bunkamura ザ・ミュージアム

Bunkamura ザ・ミュージアムでは「かこさとし展　子どもたちに伝えたかったこと」が、2022年7月16日（土）から9月4日（日）まで開催されています。
子どもたちへの大切なメッセージが込められた、600冊を超える作品を世に出された日本を代表する絵本作家・かこさとし（加古里子)氏。2018年に92歳でこの世を去られましたが、その残されたメッセージはコロナ禍や激動の国際情勢にあって、私たちの「生きる」を応援するチカラとして、ますます力強く響いてくる気がします。
誰でも一度は目や手にしたことがある作品やキャラクターたちのふるまいにどのような意味があったのか、改めてその想いの深さを知って、心を打たれる体験になることでしょう。

本展はかこさとし氏の少年時代から、創作の原点、貴重な作品や資料、そして初公開となる未完の大作「宇宙進化地球生命変遷放散総合図譜 （通称： 生命図譜） 」までを一堂に集めた回顧展です。
「だるまちゃん」シリーズ、『からすのパンやさん』をはじめ、『どろぼうがっこう』、『おたまじゃくしの101 ちゃん』など、楽しさの中に学びや創造、斬新さが秘められた、大人も夢中にさせる絵本はもちろん、初めて公開される原画もたくさん展示されています。
「かこさとし」という一人の作家が絵本を通して未来に残し、伝えたかった想いを、その生涯と作品の世界から紐解いていく展示構成になっています。

第1章：絵を描く科学者　青年期に見つめたもの
創作活動の中核となった「美術」と「科学」というふたつの要素が紹介されています。子どもの頃の絵や、自画像や働く人たちの姿を描いた「美術」の要素。そして、工学部に学んだ大学時代や世の中の役に立ちたいと科学者を志した「科学」の要素。どちらも、すべての作品を理解する上で欠かすことのできないこととして、興味深く観ることができます。

第2章：子どもたちから教わったこと　セツルメントでの活動
創作の原点にもなった太平洋戦争後のボランティア運動の一種である「セツルメント活動」時代の紙芝居を通じて、子どもたちから教えられた大事なことなどが紹介されています。作品や原画だけでなく、幻灯作品も楽しめます。

第3章：だるまちゃんとからすのパンやさん　名作に込めた想い
「だるまちゃん」 シリーズ と『からすのパンやさん』という代表作から名場面を選りすぐって紹介されています。作品の誕生秘話とともに、かこ氏がストーリーに散りばめた学びの要素が詳しく解説されており、科学者としての子どもへの真摯な想いに感銘を受けます。

第4章：子どもたちに知ってほしい さまざまなこと
第5章：いのちの成り立ちを考えたい　生命図譜に込めたメッセージ
子どもたちの中にある探求心の扉を叩き、学びのきっかけをつくるため、そしてその選択肢を広げるため、かこ氏が様々な分野の科学絵本の制作に挑んだことが紹介されています。身近なものの仕組みを細やかな図解だけでなく、普段何気なく利用しているものは多くの人々の努力があってこそ世に存在していることも伝えられています。

そして科学絵本の集大成となるのが、最晩年に描き残された「宇宙進化地球生命変遷放散総合図譜（通称：生命図譜） 」の 複製です。人の存在＝アイデンティティを知るには宇宙→地球→人間の誕生を観ていかなければいけないという、かこ氏の考えがよく表れた資料になっています。

展示の最後となるフォトスポットは密を避けられるように広々と、そしてたくさんのシーンが設定されており、安心して楽しめるようになっています。

またショップには図録をはじめ、展示の感動とともに持ち帰りたい、魅力的でさまざまなグッズも販売されています。