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特別展「桃山 ー 天下人の100年」in 東京国立博物館

東京国立博物館では特別展「桃山 ー 天下人の100年」が開催されています。
室町末から江戸初期までの100年間は、織田信長から豊臣秀吉、そして徳川家康といった戦国大名が天下統一を目指して戦った時代でした。また、南蛮貿易などを通じて日本人が西洋文化に触れ、それまで中国中心だった世界観や価値観が大きく揺らぎ、多様化した時代でもあります。
こうした時代の変革期に誕生した様々な分野の代表的な作品約230件は、本来なら日本全国を駆け回らないと観られないのですが、ここで一度に観ることができるのがこの特別展の大きな特徴です。激動の時代に天下人たちは何を求め、どのように変わっていったか?その壮大なうねりを断片的でなく、一堂に会した作品群を通じて「体感する」ことは、単に美術史をたどる以上の価値があるでしょう。

 

変革の時代を語る「桃山美術の教科書」~そして「参考書」も充実
政治史の時代区分における安土桃山時代は1573年から1603年までの30年間ですが、美術史の上では「桃山時代」は室町末から江戸初期までその特徴が観られるということで、この約100年間を桃山美術の時代とするのが一般的です。

 

この特別展ではこの時代の美術が、何を受け継いで誕生し、後世にどのような影響を与えたのかを戦国武将や茶人、文化人など有名人ゆかりの絢爛豪華な作品で検証されています。それこそ歴史や美術の教科書でよく見てきた作品が次々に登場します。紙面や画面で“情報”として作品を知ることも大切ですが、やはり本物を観るからこそ感じられることもあるでしょう。

 

また、これは特別展を観た後のお楽しみですが、図録は展示作品の写真が収録されているだけでなく、図録でしか読めない各分野のコラムや資料も充実しており、まさしく「参考書」と言えるような内容です。観た後に家でじっくり読んでいると、また、この特別展に行きたくなるので不思議です。

 

華やかさと渋さ~両極端な美に天下人は何を求めたのか?
室町時代末から江戸時代初期にかけての都の移り変わる姿を描いた「洛中洛外図屛風」をプロローグに、絵画では狩野元信から孫の永徳、その孫の探幽と、永徳のライバル長谷川等伯や海北友松、雲谷等顔による障屛画や、江戸時代初期の風俗を写した風俗画はまさに絢爛豪華です。

 

一方で対極にあるのは、利休ゆかりの茶道具の他、志野や織部、黄瀬戸に代表される意匠性に優れた桃山茶陶や花入れなどです。長谷川等伯の水墨画「松林図屛風」などを含め、侘び寂びといわれる美意識は渋く、自己の内面と対峙しているようです。天下人たちはこの両極端にある美のどちらも愛したという事実への興味は、本物の作品を前にしてますます深まります。

 

なお、10月20日から11月29日まで展示される長谷川等伯の水墨画「松林図屛風」については、その魅力と謎に迫るVR作品として東洋館B1Fのミュージアムシアターにて「国宝 松林図屛風-乱世を生きた絵師・等伯-」としてコンテンツが公開されています。本展と併せて観れば楽しいのではないかと思います。

 

天下人の想いと私たち~桃山美術の時代からのエール
桃山美術の100年のかなりの部分をしめる戦国時代。天下人は闘いの日々の中でどう生きるか?というよりも、どう死ぬか?を日々考えて暮らしていたとしても不思議ではないでしょう。本展ではそうした天下人たちの武具甲冑や刀装、陣羽織などの武装に関わる作品を観て、当時の天下人たちの精神性に思いをはせることができるのも楽しみのひとつです。

 

武装には戦うための武器としての実用性と、独自の装飾や意匠などで社会的な地位や権力を対外的に示す社会性という2つの側面があります。本展で私たちの目に飛び込むのは、それぞれの個性が際立つ社会性のほうです。
本展の冒頭に展示されている「一の谷馬藺兜」は豊臣秀吉が三河国岡崎藩士志賀家の祖先に贈ったものと伝えられていますが、その異形には圧倒されます。確かに地位の高さは誇示できると思いますが、戦列の中では目立ち、標的にされやすいようにも思えます。
陣羽織は武運長久への祈りも込められた意匠や現代の街で来てもおしゃれな色づかいの作品もあります。また鳥毛が埋め込まれたヨーロッパ風のデザインのものもあり、この時代の特徴のひとつである西洋文化の影響も見ることができます。

 

現代社会も変化が激しいですが、戦乱の世を生きた天下人と私たちの心境を安易に重ね合わせることはできません。しかし独自性あふれる趣向が凝らされたこれらの武装を観るにつけ、死を恐れず、自らの美意識を全面に押し出した生き様が感じられ、なんだか遠い桃山美術の時代から私たちへエールを送られているようにも感じました。
またこのような厳しい時代にこそ天下人は美を求めたという事実は、やはり美=アートは不急不要のものではなく、生きるために欠くべかざるものだったのだなと改めて思いました。

タイトル 特別展「桃山 ー 天下人の100 年」
会期 2020年10月6日(火) ~ 2020年11月29日(日)
会場 東京国立博物館 平成館 特別展示室
住所 〒110-8712 東京都台東区上野公園13-9
Webサイト https://tsumugu.yomiuri.co.jp/momoyama2020/
開館時間 9:30~18:00(会期中の金曜・土曜は21:00まで)
休館日 月曜日(※ただし、11月23日(月・祝)は開館。11月24日(火)は休館)
料金 一般 2,400円 大学生 1,400円 高校生 1,000円
*混雑緩和のため、本展では事前予約制(日時指定券)を導入します。入場にあたって、すべてのお客様はオンラインでの日時指定券の予約が必要です。詳しくはこちらから。
https://tsumugu.yomiuri.co.jp/momoyama2020/ticket.html