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人見 元基|イドの森で in GALLERY MoMo Projects

GALLERY MoMo Projects(六本木)では、人見元基の個展「イドの森で」が7月1日(土)から7月29日(土)まで開催されています。子どもから大人への成長と変化の過程を見つめ、大人になりながら否定的な部分も含め子どもへの憧憬の眼差しを持ち続け、その思いに戸惑いながら木彫という手法で素材に鑿を穿ち、表現に昇華させて行こうとする気持ちや姿勢が表れている人見の作品。物語性が豊かな作品の世界観にひたれば、観ている私たちのどこかの記憶とつながったり、共感するところがあり、楽しい時間を過ごすことができるでしょう。

GALLERY MoMoにおける人見元基の個展は本展で6回目となります。前回2020年に両国で行われた個展「大人になれないサピエンス」は筆者も観覧しましたが、本展と同じようにギャラリー内に漂っている、木彫の材料である樟(くすのき)のよい香りが引き金となって、その時の記憶がよみがえってきます。在廊していた人見に話を聞いた時は、本展と同じく、子どもへの憧憬の眼差しや大人になることへの葛藤を語っていましたが、本展の作品を拝見すると、その思索がさらに深化したことを感じさせます。

人見元基は1985年に島根県で生まれ、2010年に東京藝術大学美術研究科彫刻専攻修士課程を修了し、主に木彫により擬人化された動物彫刻作品を制作し、幅広い層に親しみを持って迎えられてきました。
本展では、精神分析における本能的な欲求や衝動的な部分をつかさどる「イド」という無意識の領域をテーマに、「イドの森」という舞台を設定して物語にされています。
思春期を迎えて社会とエゴの間でさまよう人間の、子どもから大人への成長過程の葛藤を木彫作品として表現、「他者との接点を童話的に物語の中心に据えて、作品一つ一つが人の営みから生まれたイコンのようになってくれればと思う」と人見自身が語っています。

人見の彫刻は初期より擬人化された動物や、子どもなどの人物がモチーフとなり、その時々の人見自身の精神的な状況を反映させているかのように見えるといいます。子どもから大人への成長と変化の過程を見つめ、大人になることへの否定的な部分も含めて子どもへの憧憬の眼差しを持ち続け、その思いに戸惑いながら木彫という手法で素材に鑿を穿ち、表現に昇華させて行こうとする気持ちや姿勢が本展の出品作品にも表れています。

本展は観る私たちの年齢、つまり人見のような疑問を持たずに、どれだけ長く“大人”の時間を過ごしてきたかによって、感じ方が違うのではないかと思いました。特に男性の場合、年齢を重ねるほどに、一番不自由になるのが人前で泣くという行為のように思います。しかし、高齢になってくると涙もろくなり、映画館ぐらいだと堂々と涙を流すようになります。この《泣き虫のおかえり》で少年が流している涙は、あなたにはどんな風にみえるでしょうか

また、《おわかれの道草》の少女の表情は、うつむき加減ながらはっきりとした意思がありそうで、裸足で歩む姿に力強さを感じます。後姿は、精神的にもたくさんのものを背負っているようにも見えますが、ぬいぐるみや靴など、歩いた後に残されたものもあります。


風で飛ばされたのでしょうか?いや、「何かを得るためには、何かを捨てなければならない」とよくいうので、自分で捨てたのかもしれません。そして、《おわかれの道草》って、どういう意味でしょうか?どう感じ、どう思うかは観る私たちの自由です。

人見の作品は、近年、物語性を込めた作品が増えたといい、本展の出品作品のほとんどにそれを感じます。そして、本展の展示スペースには、私たちが年齢を重ねるたびに経験し、葛藤した、まごうことなき真実がいくつも立ち上がっています。作品を観て、あなたの頭の中に浮かぶのはノスタルジーでしょうか、それとも“悔い”でしょうか。いずれにせよ、楽しい時間になるのは間違いないでしょう。

タイトル 人見 元基|イドの森で
会期 2023年7月1日(火)~ 7月29日(土)
会場 GALLERY MoMo Projects
住所 106-0032 東京都港区六本木6-2-6 サンビル第3 2F
Webサイト https://www.gallery-momo.com/
開廊時間 12:00 ~ 19:00
休廊日 日曜・月曜・祝日
観覧料 無料