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中沢研展 @ ANDO GALLERY

アンド―ギャラリーでは、中沢研氏が新作インスタレーション「線」を発表している個展が開催中です。中沢氏は針金やテグスなど視覚的ヴォリュームが希薄な素材を用い、展示空間に呼応したインスタレーションを制作する作家として国内外で高い評価を得ています。
本展の展示風景画像からは観念的なプレゼンテーションが展開されてるように見えますが、実際は包まれるような求心力で独特の世界観に引き込まれる、現代アートでは珍しい体験になるでしょう。

親しみさえ感じられる作品が持つ求心力
ものをただ配置したように見えるコンセプチュアルな現代アートの作品と出会った時、その思索の深さや鋭さから来る波動のような迫力に圧倒されることがあります。しかし本展における中沢研氏のインスタレーション作品は同等の思索の積み重ねは感じるものの、シンプルでありながら親しみに近い、いつの間にか吸い込まれるような求心力を感じます。

実際、訪れた人の中にはうっかり作品の中に入りそうになる方もいるくらいで、このようなふんわり包み込まれ、なおかつ引き込まれるような体験は、現代アートではあまり記憶がありません。
そう感じさせるのは、ひとつにはインスタレーションを構成する170体のオブジェの高さが約80cmと低めなので、圧迫感が少ないことがあげられます。第一印象としては、ちょっと可愛い感じもします。
ただ、そこから時間をかけて観ていくともっと深いところに、引き込まれる理由があることがわかります。

細い鉄材のオブジェが“群れ”る美しさ
中沢研氏は1970年東京都生まれ。多摩美術大学大学院美術研究科絵画専攻を修了され、かつて「キャンパスに描くように、ギャラリーの空間を構成する、中の空間を見せる」ために針金やテグスなどの細い線的な要素を用いてインスタレーションを行うと述べられています。

本展でも直径3mmの鉄材を用いたオブジェがギャラリー空間全体にランダムに配置されています。中沢氏特有のコの字型の鉄材は上半分が白くペイントされており、上部が直角に屈曲しています。また、足元に20cmほどの鉄棒を2本溶接することによってオブジェを自立させています。

白くペイントされた上半分は、横から見るとギャラリーの白い壁に溶け込んでしまいそうですが、上から俯瞰すると、カタカナのコの字がはっきり見えます。いろいろな角度や作品の周りを歩きながら観ていると、空間に立ち並ぶおびただしい数のオブジェは何かの群れのようでもあり、そのシルエットは美しく、観る人によっていろんなイメージがわいてくるでしょう。

ひとつとして同じものはないオブジェ
細くて弱々しくも見えるオブジェの基本形状は同じでも、ひとつとして同じ形はありません。また2~3体が寄り添うようにしているものや、他と少し離れてひとりぼっちのもあり、それぞれが絶妙なバランスと距離感を保ちながら存在しています。これらを順に眺めていると、いつの間にかひとつひとつのオブジェにキャラクター性を感じてしまいます。

中沢氏によると、オブジェの高さを80㎝に設定したのは、遊園地などにある立ち入り禁止のロープの高さからヒントを得たそうです。なのに私たちがこれほど引き込まれるのは皮肉な感じがしますが、そうしたことも含め、人くささを感じさせてくれます。

中沢氏はかつて、このように述べられています。『「これはこういうものだよ」というのを見せるのんじゃなくて、「これは、こういうものかもしれないけど、どうなんだろう・・・・」という、すごい曖昧な問いかけをしたいんですね。』(注1)

本展もまた、観る者に意味を強制したり、限定することはなく、その解釈は私たちにゆだねられているようです。
しかし、はっきり言えることは、作品の魅力は写真ではなかなか伝わらず、見に来ないと価値が分からないこと。そして、実際に観たなら、それは非常に稀有なアート体験になるでしょう。

注1:中沢研、安東孝一によるインタビュー『NEW BLOOD – Art Architecture and Design in Japan』六曜社、2001年、P96より

タイトル 中沢研展
会期 2022年2月8日(火)~ 4月28日(木)
会場 ANDO GALLERY(アンドーギャラリー)
住所 〒135-0023 東京都江東区平野3-3-6
Webサイト http://www.andogallery.co.jp
開廊時間 11:00 ~ 19:00
休廊日 日・月・祝日休
料金 無料