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STARS展:現代美術のスターたち―日本から世界へ @ 森美術館

森美術館では「STARS展:現代美術のスターたち―日本から世界へ」が開催されています。日本には現代アートのスターは何人もいますが、その中でも世界のさまざまな地域や世代から高い評価を得ている作家6名が選ばれ、彼らの作品や取り組みを通じて、日本の現代アートの強さや現在地が見えてくる展覧会です。
代表作の展示はもちろんですが、作家の歩みや取組みが世界からどう評価されてきたかを見る資料展示や、作家本人のインタビューを交えた音声ガイド(有料)を利用することもできます。ほかに、森美術館のYouTubeチャンネルや本展の特集ムック(CASA BRUTUS、Pen)などの作品の理解を深め、楽しくするメディアも充実しています。
現代アートのビギナーには絶好の入門編的な展覧会となりますが、現代アート通の方にとっても名作に再会できる良い機会になるでしょう。今年、もっとも見逃せない展覧会のひとつです。

作家が人生をかけて表現してきたものが見える
この展覧会を訪れる価値はいくつもありますが、最大の見どころは各作家の世界に認められた初期のデビュー作と最新作が同じ展示スペースに展開されている点です。これにより、私たちはそれぞれの作家が人生をかけて、何を表現しようとしてきたかを目のあたりにすることができます。
本展で展示されている作品を観る限り、6名の作家が表現しようとしてきたものは最初から現在まで、一貫したゆるぎないコンセプトがあるようです。作品の発表年は1950年代から2020年にまで渡りますが、途中でいくつもの社会的、経済的、文化的な節目がありました。特にまだ記憶に新しい2011年の東日本大震災というできごとは作家たちにとっても大きな苦悩や対峙すべき課題となったようです。
作家たちがこれをどう受け止め、これまで実践してきたことの中でどう表現して昇華したかを観ると、そこに現代アートの強さやしなやかさを感じます。また私たちにとっても、このCOVID-19により一変した世界の、この先を見据えるために示唆に富んだメッセージとなるでしょう。

日本から世界へ踏み出していった歩み。そして「世界」とは?
本展の順路の中ほどには6名の作家の活動歴と、海外で開催された日本の現代アート展50展のアーカイブ展示が用意されています。もしかしたら、ひとりの作家の展示を観るよりも、はるかに長い滞在時間になってしまいそうな興味深いコーナーになっています。
6名の作家の活動歴を年表に沿って紹介するコーナーには、それぞれが出展した主要な展覧会歴、カタログ、展示風景写真、展覧会評などの資料を通して、各作家が世界でどのように評価されてきたかが解き明かされています。
さらに1950年以降、海外で開催された日本の現代アート展50展の各概要とともに、展示写真や当時の批評など、貴重なオリジナル資料が紹介されています。最初は「間」などの伝統的なキーワードが観られますが、2000年代に入るとサブカルチャーが登場するなど、主催者や企画者はどのように「日本」を伝えようとしたか、工夫や苦労が見て取れます。また、最初は欧米を向いていたものが2000年代に入ると中国やアジアにも広がっていったり、資料の中には厳しい批評などもあるなど、日本の現代アートが世界といかに“戦い”、受け容れられていったかがよく理解できます。

時間と空間を超えて旅する6名の作家の軌跡
それでは展示の登場順に作家の出展内容を紹介しましょう。

村上隆
日本人は水墨画や浮世絵に観られるように、西洋の遠近法とは違う平面の奥行きや美を生んできました。村上さんは、そうした日本独自の感性をベースに「スーパーフラット」という理論を世界に提唱し、キャラクター絵画やフィギュア彫刻を発表しています。
今回の最新作となる「チェリーブロッサム フジヤマ JAPAN」はデティールまで見逃せません。また映像作品の「原発を見にいくよ」も8分8秒と長いですが、見ごたえがあります。これは、仕事を休んででも、平日の空いていそうな時間にきてじっくり観るべきでしょう。

李禹煥(リ・ウファン)
李さんの展示スペースだけ、床一面に白い砂利が敷き詰められています。一歩踏み出すごとに砂利のきしむ音と、独特の感触が足の裏から伝わり、それだけで作家の意図に思いを巡らせることができて楽しくなります。実際には入ったことがありませんが、枯山水の庭に足を踏み込んだようでした。
他の作家さんもコンセプトに一貫性を感じますが、特に李さんの姿勢は「一徹」という言葉が浮かびます。言われなければ、初期の作品と最新作だということがまったく分からないほどです。

草間彌生
草間さんは70年にも及ぶキャリアをお持ちですが、変わらない前衛的でポップな作風はいつ観ても若々しさを感じます。
新宿にある草間彌生美術館はCOVID-19が拡がる前から1回に入る人数を制限する予約制でしたが、かつて訪れた時、30名くらいの入館者の内、日本人は私だけかと思うくらい外国人の比率が高かったことを思い出します。1959年に発表された初期の作品から最新作の「たくさんの愛のすばらしさ」まで、何が世界の人の心を動かしているのかを考えるのも本展ならではの楽しさかもしれません。

宮島達男
宮島さんは「それは変化し続ける」、「それはあらゆるものと関係を結ぶ」、「それは永遠に続く」というコンセプトに基づき、数字が表示されるデジタルカウンターを用いてインスタレーションや立体作品などを制作されています。
最新作となる「時の海 ― 東北」は、何も説明を受けないでも美しく、心が鎮まります。無機質に見えるデジタルの数字に血が通っているようで、次のコーナーで作品の背景となるプロジェクトの紹介をされているので、その魅力がどこから来ているのかが分かります。

奈良美智
奈良さんの導入部には初期のドローイング以外に、創作活動の出発点や根幹になっている本やグッズ、レコードやCDが展示されています。1979年にウォークマンが発売される以前、テレビではほとんど歌謡曲しか聴けなかった頃、展示されているようなロックミュージックは部屋にこもってスピーカーと対峙して全身で聴くものでした。知らないジャケットもたくさんありましたが、奈良さんの原点にいくつかの共通項を見出して、少しうれしくなります。
SNSなどでの好評価は知っていましたが、「Miss Moonlight」は包み込まれるような優しさを感じる、人間味あふれる作品でした。

杉本博司
杉本さんの初期の代表作「シロクマ」はシロクマがアザラシを狩った、生と死が交錯する瞬間をとらえた作品ですが、実は博物館の剥製を撮影したものだそうです。この写真作品を観た人が死んでいるものを生きていると思えるのなら、生きているとは何なのか?という問いかけをすることで自分の中のビジョンを他人と共有するそうです。
杉本さんの表現は写真や現代美術だけでなく、建築、伝統美術、古典芸能など多岐に渡ります。本展では写真と映画作品が中心なので、生と死や時間と空間など、物事の本質や真理を見つめた世界観が分かりやすいのではないかと思います。

タイトル STARS展:現代美術のスターたち―日本から世界へ
会期 2020年7月31日(金)~ 2021年1月3日(日)
会場 森美術館(六本木ヒルズ森タワー53階)
住所 東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53階
Webサイト www.mori.art.museum
開館時間 10:00~22:00(最終入館 21:30)
※火曜日のみ17:00まで(最終入館 16:30)
※11月3日(火・祝)は22:00まで(最終入館 21:30)
休館日 会期中無休
料金 一般 2,000円
学生(高校・大学生)1,300円
※「STARSの学割」期間中は650円に。期間は2020年9月21日(月・祝)~10月31日(土)
子供(4歳~中学生)700円
シニア(65歳以上)1,700円「STARS展」音声ガイド付チケット
一般+音声ガイド 2,500円
学生(高校・大学生)+音声ガイド 1,800円
子供(4歳~中学生)+音声ガイド 1,200円
シニア(65歳以上)+音声ガイド 2,200円