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平 俊介|茫漠建設現場の夜 at GALLERY MoMo Ryogoku

GALLERY MoMo Ryogokuでは、平俊介による個展「茫漠建設現場の夜」が2024年2月24日(土)から3月30日(土)まで開催されています。タイトルにある“茫漠”とは一般的には広くてとらえどころがないことや、ぼうっとしてはっきりしないさまを意味し、本展でモチーフとなっている建築現場の夜を通じた作家の心象風景を表しているようです。また、作品からは空虚感のみならず、時おり強い不穏な雰囲気も感じとれます。平の生み出す、この独特な世界観をあなたも体験しに、お出かけしてはいかがでしょうか。

いつの間にか共感してしまう“建設現場の夜”

平の描く建設現場の夜には、何か魔物が棲んでいるようにも見えますが、中には神獣や幻獣にも見えるモチーフもあれば、無機質なフォルムをもつオブジェクトも描かれています。
作品を観ていて改めて気づかされるのは、夜に限らず街を歩いていると、確かに自然と建設現場には目が行きます。すでに役割が分かっている既存の建築物よりも、これから何者になるか分からない建築現場には好奇心と不安が入り混じった関心を抱きます。私たちは、たとえ現場の建築確認看板や法令許可票に建物の目的が表示されていても、“未知の隣人”として本能的に警戒してしまうのかもしれません。


平の作品は、最初は空想された異世界に見えるような印象もありますが、ひとつひとつじっくり観ていくと、自分が建設現場を見ていた時の感情を思い出し、いつの間にか共感していることに気づくのではないでしょうか。

都市に対する違和感などをビジュアル化

平俊介は1988年に東京都で生まれ、2012年に東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業後、2014年には同大学院美術研究科油画専攻を修了しています。平は、人の作り出すものの中に欲求や願望を感じとり、架空の建造物や構造物を描くことで、建造物と人々の心理の関係性や、平が感じた都市に対する違和感などをビジュアル化しています。そこには産業革命以降のすさまじい人間の機械化やあらゆるものの消費のスピードが加速するという時代性が感じられますし、大都会のビル群、特に東京という街の活気や先進性と、閉塞感や退廃が入り混じったような空気感があるように思われます。
2021年に「労働」をテーマに開催した個展では、現実と幻が入り混じった景色を描き、どこか鬱屈していて空虚感が漂うものばかりで、現代日本社会の労働環境を体現しているような作品を発表して高く評価されました。

多数のドローイングや立体作品も展示

平は初期より、現実の建造物や構造物が擬人化の要素を加味され、例えば建機や重機などは躯体から木の枝のごとく、うねるように伸びる触手が描かれていました。本展ではそのあたりの描写は抑え目になっているといい、作品を観たときの最初のインパクトは激し過ぎず、タイトルに込められた“茫漠”という心象風景が素直に伝わってくるようです。

本展では絵画作品の他に、多数のドローイングと2点の立体作品が展示されています。ドローイングは“開発構想中”のものが多く、実際に完成された絵画作品の世界の、さらに深いところで息をひそめている何かに遭遇するか、あるいは作家の思索の軌跡をたどることができます。立体作品は作品世界のより深い理解を助ける部分もありますが、平の志向する新しい展開が発露している存在としても受け止められる感じがして興味深いです。

目的も全貌も分からない建造物の、怪しげな建設現場を描きたいという思いから制作をスタートさせた今回のシリーズは、誰が計画したのか、はたまた計画だけが一人歩きし始めたのか、怪しげな気配を感じる作品となっているようです。この独特な世界観をあなたも体験しに、お出かけしてはいかがでしょうか。

最後に、同ギャラリーの公式サイトに掲載されているアーティストコメントを引用で紹介します。

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アーティストコメント

様変わりし続ける町の風景に、水面下の何かの存在を想像することが増えてきた。
目や耳から入るニュースや情報に懐疑的になりがちな昨今であるせいか、建設現場や解体現場から漂う、見えない第三者の気配のようなものを強く感じるようになった。
誰かの計画のもと、明確な目的を持って組み上げられているのか、目的すら失って一人歩きした成れの果ての姿なのか。
ぽつりぽつりと作業灯の灯る夜の工事現場に蠢く、無言の意思の気配をひたすらに描きたかった。

2023年 平 俊介

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タイトル 平 俊介|茫漠建設現場の夜
会期 2024年2月24日(土)~ 3月30日(土)
会場 GALLERY MoMo Ryogoku
住所 130-0014 東京都墨田区亀沢1-7-15
Webサイト https://www.gallery-momo.com/current-ryogoku
開廊時間 11:00 ~ 19:00
休廊日 日曜・月曜・祝日
観覧料 無料