山下茜里 「Beyond the Skin　ビヨンド・ザ・スキン」at 小山登美夫ギャラリー天王洲

小山登美夫ギャラリー天王洲では、同ギャラリーでは初めてになるアーティスト・山下茜里の個展「Beyond the Skin　ビヨンド・ザ・スキン」が2024年1月20日（土）から2月10日（土）まで開催されています。彼女の作品画像をPCやスマホで観ると、一見、ギョッとするかもしれませんが、実際に作品の前に立つとずいぶん違う印象を受けるでしょう。蝋染めという技法で表現されたイメージは、細やかで美しく、どこか混沌ともしています。お出かけして、ご自分の目で確かめてみてはいかがでしょうか。

実際に観るとかなり印象が違う山下の作品

最初にお伝えしたいことは、今、あなたがPCやスマホで観ている作品画像と、同ギャラリーで観る実際の作品は、かなり違う印象をあなたに与えるでしょう。この赤色は毒々しくなく、もっとやわらかく、あたたかい感じがします。また、モチーフや絵柄も決して情念的でなく、生命力や霊魂を表し、やすらぎを与えるというペイズリー柄のように、生物的なものから着想を得た模様のようにも見えるかもしれません。

そのように感じられる一番の理由は、モチーフがペインティングではなく、蝋染めといわれる染色で表現されているからです。特に血管のようにも見える細い線はチャンチン (一本ノズル)といわれる染道具で描いたといい、恐らく何回にもわたって繰り返し行われる作業によって作品は完成されるのでしょう。

真の裸とは、皮膚をも脱いだ状態ではないかという考え

山下は1997年、大阪生まれで京都精華大学、大学院で染色を学びました。その時、アーティストの北山善夫から多くを学んだといいます。彼女が何を描こうとしているかについては、同ギャラリーの公式サイトから、山下がギャラリー代表の小山登美夫に送ったメールから引用します。

『真の裸とは、皮膚をも脱いだ状態ではないかと考えています。本シリーズに登場する赤い人には、皮膚や体毛などの表層、自身の内部と外部を隔てる「最後の砦」がありません。人は、その表層を見てあなたを「あなた」と認識しているのだと思います。
この個人性を取り除くことで、何者でもない人の姿を映し出したいと考えました。
「Beyond the Skin 」は、直訳すると「皮膚を超えて」という意味です。
この赤い人は、皮膚を超えてその奥の、人という生き物であるほかの何者でもありません。』

いろんな期待とともに、山下の現在地を目撃する

山下の描く人物のモチーフは年齢・性別不詳で、押し合いへし合いしながら“目”だけがギラリと光っています。また、生まれたてなのか、死の直前なのか、よく分からないこの状況はこれからどうなっていくのでしょうか？それは誰にも分からないと思いますが、非常に興味をかき立てられるところです。ぜひ、実際に“目撃”しに、訪れてはいかがでしょうか。